2013/04/28

村上春樹 / ねじまき鳥クロニクル


村上春樹の作品で一番好きなものはどれか?
難しい質問ですね。
ビートルズで一番好きなアルバムはどれか選ぶ位難しいです。
「世界の終わり」のときもあれば「ダンス・ダンス・ダンス」のときもある。短編にも幾つか大好きな作品があります。もちろん「1Q84」も好きです。
でも、長い間何度も読み返しているのは「ねじまき鳥」かも知れません。

「ねじまき鳥」の何が僕をこんなに惹きつけたのか。
好きなシーンがあるんです。
3部の、もうクライマックス、というシーンです。
突然消えてしまった妻を何とか取り戻そうと主人公は遂にどこかのホテルの一室で妻(と思われる女性)と暗闇の中で対面します。

彼女は暗闇の中で小さなため息をついた。
「どうして私をそんなに私を取り戻したいの?」
「愛しているからだ」と僕は言った。

結局のところ(春樹さん風に言えば)、この台詞が言いたかったのだ、と僕はずっと考えています。言うのは簡単だけれど伝えるのは難しい。この言葉を伝えるために実に約1000ページを使っています。このシンプルな言葉を伝えたいがために、暴力があり、死があり、性があり、戦争があり、人生で起こりうるようなあらゆる事が怒涛のように主人公にのしかかって来るんです。これは小説家にしか出来ない業ですね。

「愛しなさい」そして「生きなさい」(これはもう一つの非常に重要なテーマだ)と村上さんはずっと言い続けているのだと思うんです。
それっていつの時代にも、どんな人にとっても、大切なことですよね。







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