2013/11/18

田代一倫 / はまゆりの頃に



写真家、田代一倫が自分と同じ歳だと知ってこの本への興味はますます強くなった。

自分は偶然というべきか転職のため2011年1月に東京を離れ、大阪へ来ていた。
2011年3月11日はずっとテレビを見ていた。その日から見聞きする情報から自分が東京へ行くことはしばらくないだろうと思った。子どもが生まれてからは尚更その思いは強くなった。
しかしながら被災地へ自ら向かう人々もたくさんいる。
写真家もその一人だった。

ここには被災地の悲惨な光景ではなく、そこに暮らす人々の肖像が453点収められている。
皆一様にカメラのレンズに顔を向けている。険しく力強い顔つきの人もいるが笑顔の人が多い。春も夏も秋も冬もただそこで暮らしている人々が撮られている。
テレビや新聞の情報から伝わらない何かが自分の胸に迫ってくる。ページを捲る度にどきどきする。何故だろう。そこに写っている人の背景、服装、持ち物、そして目を見る。そしてまた読み返す。そしてこの二年間を思い返したりしている。

2011年4月に漁師を撮影した際の覚え書きにこうある。

「お前も荷物を降ろすの手伝え!」
・・・支援物資を下ろしている漁師さんに、こう言われました。しかし自分は写真を撮ることを一番に考えるべきではないかと思い、背中に視線を感じながら引き返しました。

きっと撮影の間にこういう場面に出くわすことは何度もあったはず。それでも写真を撮り続けて一人の出版社の方と共に素晴らしい本を創りあげた。出会ったことも、顔も知らない同じ年の写真家に敬意を抱いている。