「忙しい、というのは心を失う、ということなんだよ」
この本を読んで思い出したのはこの言葉です。
どこで誰から聞いたのか僕は思い出せません。あるいは本で読んだのかもしれません。
ある日、実家の妹の本棚から「モモ」を失敬しました。手元には愛蔵版もあります。(これは友人から頂きました)
時間に追われ、お金を追いかけていくとどうなってしまうのか、童話という形式を取って描かれています。(時間を銀行に貯蓄する、というお話になっている以上、お金も恐らくこの本では重要なテーマだと思います)
多くの絵本や童話というのは大人にも読まれるべきものだと思うけれど、この本は正にそういった本の代表作と言っていいと思います。
読み継がれていく本というものはいつの時代にも通じるテーマがあり、何よりも人間の本質を抉り出しているものだと思います。そこには人間の素晴らしさと愚かしさが同居している。
子供たちがそうであるように、初めから全ての人間がここに描かれている「灰色の人間」ではないですよね。「何か」に心を支配され、色を失っていくものです。
あとがきで作者(あとがきにおいてこの物語はひとから聞いたと言っていますが、ここでは触れません)が鋭いことを言っています。
「わたしはいまの話を、過去に起こったことのように話しましたね。でもそれを将来起こることとしてお話してもよかったんですよ。わたしにとっては、どちらでもそう大きな違いはありません」
この物語は1973年に発表されています。
現代において、多くの人が感じているように僕も簡単な言葉で言ってしまえば、「幸せ」について考えています。
「モモ」がそうであるように人の心に耳を傾け、価値観に縛られず、少しの勇気があればそれに近づくことが出来るのかもしれない。
そういったことを「考えさせてくれる」この本は素晴らしい本だと思います。
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