正直に言うと僕は高橋源一郎さんの熱心な読者ではない。「日本文学盛衰史」は大好きだけれど。twitterの熱心なフォロワーと言った方がいいかも知れない。もっと言うと高橋さんがtwitter上で展開している「午前0時の小説ラジオ」のファンだ。だから、「あの日」から発せられる高橋さんの言葉に耳を澄ました。
この本にはタイトル通り、3.11以降の高橋さんの思考が凝縮されている。twitter上の言葉、そして小説や評論、エッセイがまとめられている。twitterのフォロワーとしては、一冊の本に、言葉が活字として印刷される事に喜んだ。twitterは即興だからその時の言葉の熱と冷気がリアルタイムに伝わる。この本にはその時の温度がしっかりと閉じ込められている。開けばいつでもその時の温度が伝わる。心臓の鼓動が高まる。もちろんそれは高橋さんの言葉が生々しく生きているからだと思う。しばらく、恐らく何年も、僕はこの本を読み返すだろう、そんな気がしている。そういった本はなかなか無い。
「正しさ」とはなんだろう。この混沌とした世の中にあって高橋さんは徹底的に考え続ける。安易に「答える事」が求められてきたこの時代に「考える事」だけが反抗の標に思える。全ての物事が二極化していく構造の中で立ち止まり、考える事の大切さ。立ち止まること。それは今を生きる人々が忘れてしまった行為だ。立ち止まり、振り返る事は学びであって恥ずかしい事ではない。それは未来への思考だ。思考を止めるな、考えろ。僕はそんな事をずっと考えていた。高橋さんは考えさせてくれた。
5月1日に高橋さんはこんな言葉を残している。僕は目頭が熱くなるのを抑え切れなかった。
"いまこの場にいない人間は当然ながら、発言することはできない。たとえば、来年、10年後、あるいは50年後に生まれてくる人間は、まだ存在すらしていないが故に、「現在」について何も発言する事は出来ない。だからこそ、いま生きているぼくたちは彼らへの「責任」を負っているのではないだろうか"
重要でシンプルな答えがこの言葉にはあるように思う。